
「蛍光灯をLEDに交換したいが、工事なしで済ませられないか」
「通販で見かける『工事不要』の直管型LEDランプは、事業所で使ってもよいのか」
こうした疑問を持つ施設管理の担当者もいるのではないでしょうか。
結論からいえば、蛍光灯のLED化には原則として工事が必要です。蛍光灯とLEDでは点灯の仕組みが異なるためです。また、「工事不要」をうたう製品では発煙・発火などの事故が報告されています。
日本照明工業会は、この点灯方式ではなく、器具ごとの交換を推奨しています。
LED化の工事には、安定器を切り離して既存の器具を活かす「バイパス工事」と、器具ごと交換があります。どちらが適しているかの決め手は、器具本体・ソケット・器具内の配線の状態です。
本記事では、「工事不要」をうたう製品が販売されている経緯と、事業所で使う場合の4つのリスクを解説します。あわせて、工事してLED化する3つの方式、既存器具の状態に応じた選び方、蛍光灯とLEDの電気代の差を計算する方法を整理します。
自社の条件を計算式に当てはめながら判断できる構成にしていますので、ぜひ参考にしてください。
蛍光灯のLED化は工事不要でできる?結論と判断基準

「工事不要でLED化できるのか」という疑問に、まず結論からお答えします。そのうえで、事業所が検討すべき2つの論点を解説します。
結論:蛍光灯のLED化は工事を伴う方法が基本
蛍光灯は、照明器具の内部にある「安定器」を介して点灯します。安定器とは、蛍光ランプを点灯させ、ランプに流れる電流を安定させるための部品です。一方のLEDは、安定器を使わず電源回路で点灯します。
点灯の仕組みが異なるため、既存の蛍光灯器具でLEDを使うには、原則として配線工事か、器具ごとの交換が必要です。
既存の蛍光灯器具へのLEDランプの取り付けについては、公的機関や業界団体が注意喚起や情報提供を行っています。業界団体である一般社団法人日本照明工業会(以下、日本照明工業会)のほか、消防庁や製品評価技術基盤機構(NITE)が該当します。
参考:蛍光ランプ交換に関する情報提供について(令和6年7月12日 事務連絡)|消防庁
参考:火災事例・LED照明|東京消防庁
通販サイトなどで「工事不要」をうたう直管型LEDランプを見かける方もいるのではないでしょうか。ただし、業界団体の日本照明工業会は、既存の器具にランプだけを取り付けるのではなく、器具ごとの交換を推奨しています。その理由と経緯は次の章で解説します。
検討すべきは「どの方式で・いつLED化するか」
工事が前提である以上、事業所が決めるべきことは「工事をするかどうか」ではありません。「どの方式で・いつ実施するか」の2点です。
方式は、安定器を切り離すバイパス工事、専用電源を設置する電源別置型、器具ごと交換の3つが一般的です(それぞれの内容は次の章で解説します)。どの方式が適しているかは、既存器具の状態によって変わります。
時期の判断材料になるのは、器具の使用年数です。日本照明工業会は、照明器具の適正交換時期を8〜10年、耐用の限度を15年としています。器具の内部にある安定器についても、同じ年数が示されています。
参考:リニューアルQ&A|一般社団法人日本照明工業会
使用年数が長い器具ほど、内部の部品の劣化が進み、事故のリスクが高まる点に注意が必要です。また、蛍光灯を使っている間は、LED化した場合と比べて電気代の差が生じます。差額がいくらになるかは、記事の後半で計算式とあわせて試算します。
照明器具の状態や適した工事の方式は、外観だけでは判断が難しい場合があるため、専門業者による確認が必要です。株式会社MASSでは、現場調査で器具の点灯方式や設置環境など18項目を確認したうえで、どの方式で・いつ進めるのが適切かをご提案します。ご相談・お見積りは無料です。
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なぜ「工事不要の直管型LEDランプ」が販売されているのか

原則として工事が必要なのであれば、なぜ通販サイトで「工事不要」の製品を見かけるのか、という疑問が残ります。
ここでは、「工事不要」とうたわれる仕組みと、日本照明工業会が器具ごとの交換を推奨している経緯を解説します。
仕組み:既存の安定器を通してLEDを点灯させる
「工事不要」をうたう製品の多くは、既存の蛍光灯器具の安定器をそのまま利用して点灯する直管型LEDランプです。口金には、主に蛍光ランプと同じG13が使われています。
ランプ側の回路が、安定器から出力される電気を受けて動作します。配線に手を加えず、ランプを差し替えるだけで点灯するため、「工事不要」と言われているのです。
ただし、この方式では、蛍光灯用の部品である安定器が回路に残ります。LEDには本来不要な安定器にも、電気が流れ続けます。
また、器具の点灯方式(グロースタータ式・ラピッドスタート式・インバータ式)とランプの適合が前提です。適合しない組み合わせは、発煙・発火の原因になります。
参考:照明器具のランプ交換による事故(製品安全情報マガジン Vol.475)|製品評価技術基盤機構(NITE)
事故が報告され、業界団体は器具ごとの交換を推奨している
日本照明工業会は、既存の安定器を通して点灯するG13口金直管LEDランプについて注意喚起を出しています。製造販売事業者に向けて、安全規格の順守を求める内容です。
参考:G13口金直管LEDランプ製造販売事業者様へのお願い|一般社団法人日本照明工業会
背景にあるのは、事故の報告です。電源回路の故障などによりランプ内部で発煙・発火し、ランプの外郭樹脂や口金に燃え広がってランプが落下する事故が起きています。
こうした経緯から、日本照明工業会は、既存器具にランプだけを取り付ける方式ではなく、器具ごとの交換を推奨しています。
交換先としては、専用口金の規格(JEL801。2013年にJIS C 8159-1として規格化)に対応した直管型LEDランプと専用器具の組み合わせや、器具・ランプ一体型のLED器具があります。
一方で、この方式の製品が市場からなくなったわけではなく、通販サイトなどでは現在も販売されています。ただし、事業所で長く安全に使うことを考えると、器具の状態に合わせて工事を伴う方法を選ぶと安心です。
事業所で使う場合に確認しておきたい点は次章の「4つのリスク」で整理します。その前に、安全にLED化する選択肢として、工事を前提とした3つの方式を確認しておきましょう。
工事してLED化する3つの方式
工事を前提とした場合、LED化の方式は次の3つです。
| 方式 | 安定器の扱い | 工事 | 施工・備考 |
|---|---|---|---|
| ①バイパス工事(電源内蔵型ランプ) | 回路から切り離す | 必要 | 有資格者による施工。既存器具の状態確認が前提 |
| ②電源別置型 | 撤去し、専用電源を設置 | 必要 | 有資格者による施工 |
| ③器具ごと交換 | 器具とともに撤去 | 必要 | 有資格者による施工。推奨(日本照明工業会・NITE) |
| (参考)安定器をそのまま利用 | 残す | 「不要」とうたわれる | 日本照明工業会は器具ごとの交換を推奨。事故例あり |
①バイパス工事は、安定器を回路から切り離し、ランプに内蔵された電源回路で点灯させます。配線を変更する電気工事にあたるため、電気工事士法(第3条)にもとづき、電気工事士の資格を持つ者が施工します。
消防庁は、バイパス工事を適切に実施した器具でLEDランプを使用する場合、安定器に起因する火災のおそれはないとしています。バイパス工事は器具本体を活かすため、器具ごと交換に比べて初期費用を抑えやすい方式です。
②電源別置型では、安定器を撤去し、専用のLED電源装置を器具側に設置します。こちらも安定器の撤去と配線の変更を伴うため、有資格者(電気工事士)による施工が必要です。
③器具ごと交換は、照明器具とランプを一体で新しくする方式です。日本照明工業会とNITEは、この方式を勧めています。器具本体・ソケット・器具内の配線も新しくなるため、劣化が進んだ器具に適しています。
器具の交換も配線の接続を伴う電気工事にあたるため、電気工事士の資格を持つ者が施工します。バイパス工事と器具ごと交換のどちらを選ぶかは、記事の後半で解説します。
なお、表の最下段にある「安定器をそのまま利用する方式」が、通販サイトなどで「工事不要」とうたわれている製品にあたります。
参考:電気工事士法|e-Gov法令検索
参考:蛍光ランプ交換に関する情報提供について(令和6年7月12日 事務連絡)|消防庁
工事費用の相場や業者の選び方は、次の記事で詳しく解説しています。
▼あわせて読みたい
蛍光灯からLED工事をする前に知るべきことは?交換方法・費用・注意点まとめ
「工事不要」をうたう製品を事業所で使う4つのリスク

ここでは、「工事不要」をうたう製品を事業所で使う場合のリスクを4つ解説します。いずれも「点灯するかどうか」ではなく、「事業所として負えるリスクかどうか」という観点で確認してください。
なお、ランプが点灯したからといって、器具と適合しているとは限りません。
劣化した照明器具内の安定器による発火・発煙のおそれ
前提として、安定器は照明器具の内部に組み込まれている部品です。「工事不要」をうたう製品では、安定器を残したまま通電が続きます。そのため、安定器が劣化していれば、LEDランプに替えた後も安定器による発火・発煙のリスクが残ります。
適合しない組み合わせで取り付けた場合、ランプや器具内部が高温になり、発火・発煙に至るおそれがあります。実際の事故も報告されています。
東京消防庁は、既存の照明器具に適合していないLED照明を取り付けた事例を公表しています。LED照明の電子機器が故障して出火したものです。NITEも、ラピッドスタート式の蛍光灯器具に、安定器を取り外す工事をせずLEDランプを取り付けた事例を紹介しました。
この事例では、余計な負荷がかかって異常発熱した安定器内部の部品がショートし、出火に至っています。
参考:火災事例・LED照明|東京消防庁
参考:照明器具のランプ交換による事故(製品安全情報マガジン Vol.475)|製品評価技術基盤機構(NITE)
また、発火箇所は安定器に限りません。ランプの口金樹脂への類焼や、ランプ内部の電源基板の焼損も報告されています。「安定器さえ問題なければ安全」とは言えない点にも注意が必要です。
安定器が電力を消費し続け、省エネ効果が目減りする
既存の安定器を通して点灯する方式では、ランプをLEDに替えても、安定器自身が消費する電力が残り続けます。安定器の損失分だけ器具全体の消費電力が増えるため、LED本来の省エネ効果を十分に得られない可能性があります。
省エネを目的にランプを交換していたにもかかわらず、期待した削減幅に届かないおそれがあるということです。金額にするとどれくらい違うのかは、次の章で計算式とあわせて試算します。
ランプ代を払っても、安定器の寿命で二重投資になる
前述のとおり、日本照明工業会が示す安定器の適正交換時期は8〜10年、耐用の限度は15年です。安定器は、照明器具と同様に寿命がある部品です。
参考:リニューアルQ&A|一般社団法人日本照明工業会
「工事不要」をうたうランプは、既存の安定器に依存して点灯します。安定器が寿命を迎えれば点灯しなくなり、その時点で、安定器を切り離す工事か器具ごと交換のどちらかが必要になります。
つまり、ランプ代を支出した数年後に、改めてLED化の工事費用が発生する「二重投資」になり得るということです。灯数が多い事業所ほど、この金額は大きくなります。
さらに、使い続けている間は発火・発煙のおそれを抱え続け、省エネ効果も目減りしたままです。次に述べる安全確認の責任の問題も残ります。
器具メーカーの責任の対象外となり、安全確認を自社で担う
日本照明工業会は、適合ランプではない直管型LEDランプに取り換えた器具について、照明器具の製造業者は製造者としての責任を負えないとしています。この場合、ランプを交換した側の責任で対処することになります。
「工事不要」をうたう製品を自社で取り付けると、器具の安全性の確認も自社で担うことになります。一方、バイパス工事などで器具を改造する場合は、施工した工事業者が責任をもって安全性を確認することが求められています。
参考:蛍光ランプ交換に関する安全啓発リーフレットの送付について(令和6年6月10日 事務連絡)|消防庁
参考:蛍光灯器具に取り付けできる直管LEDランプの使用・照明器具改造に関する注意点(JLA2008)|一般社団法人日本照明工業会
事業所では、安全管理の責任をどこが負うかが、設備の資産管理や修繕計画にも関わります。工事を伴うLED化であれば、有資格者による施工と安全確認を前提に進められます。
【試算】蛍光灯とLEDの電気代の差は、100灯で年いくらか

ここで計算するのは、蛍光灯のまま使い続けた場合と、LED化した場合の電気代の差です。実施時期を判断する材料として、前提条件と計算過程をすべて示したうえで試算します。
なお、以下の数値はすべて仮定にもとづく目安です。実際の金額は、器具や契約条件によって変わります。
試算の前提条件(灯数・点灯時間・電力量料金単価)
試算の前提条件は次のとおりです。
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 灯数 | 100灯 |
| 年間点灯時間 | 3,000時間(1日10時間) |
| 電力量料金単価 | 25円/kWh(高圧受電を想定した仮定値) |
| 消費電力差(1灯あたり) | 35W(蛍光灯器具 約45W → LED器具 約10W) |
年間点灯時間の3,000時間は、日本照明工業会が照明器具の適正交換時期の前提としている点灯条件に合わせた値です。同会は「1日10時間、1年3,000時間点灯で10年」としています。
参考:リニューアルQ&A|一般社団法人日本照明工業会
電力量料金単価は、お手元の電気料金請求書に記載された「電力量料金単価」が最も正確な入力値です。本記事で用いる25円/kWhは、高圧受電の事業所を想定した仮定値です。税・再生可能エネルギー発電促進賦課金を含む水準として置いています。
単価は契約内容や受電方式によって大きく異なります。税・再エネ賦課金を含むかどうかでも変わるため、自社の請求書の単価で計算し直してください。
消費電力差は、蛍光灯器具(安定器の損失を含む)と、器具ごと交換した場合のLED器具の消費電力の差です。ここでは直管40形を想定し、1灯あたり35Wと仮定しました。実際の値は、器具のカタログに記載された入力電力で確認できます。
計算式は次のとおりです。
年間の差額(円)= 消費電力差(W)÷ 1,000 × 年間点灯時間(h)× 電力量料金単価(円/kWh)× 灯数
蛍光灯とLEDの電気代の差は年間約27万円(100灯の場合)
前提条件を計算式に当てはめると、次のようになります。
- 電力量の差:35W ÷ 1,000 × 3,000時間 × 100灯 = 10,500kWh/年
- 金額の差:10,500kWh × 25円/kWh = 年間262,500円(約27万円)
つまりこの前提では、蛍光灯とLEDの電気代の差は年間約27万円になります。1灯あたりでは年間2,625円です。1灯あたりの金額は灯数に左右されないため、自社の灯数を掛ければそのまま目安になります。
繰り返しになりますが、この金額は「消費電力差35W・年3,000時間・25円/kWh」という仮定にもとづく目安です。自社の器具の消費電力と請求書の単価を、先ほどの計算式に当てはめ直してみてください。
工事費は何年で回収できるか|計算式と考え方
LED化の工事費用は、製品・施工業者・現場条件によって大きく変わります。そのため本記事では相場の金額を示さず、手元の見積額から回収年数を計算する式を紹介します。
回収年数(年)= LED化の初期費用(円)÷ 年間の削減額(円)
年間の削減額は、前項で試算した金額です(100灯・35W差・25円/kWhなら年間約27万円)。施工業者から受け取った見積額をこの金額で割ると、回収までのおおよその年数が分かります。
回収後は、削減額がそのまま手元に残る計算です。日本照明工業会は、照明器具の適正交換時期を8〜10年としています。
回収年数がこの期間より十分に短いかどうかが、投資判断のひとつの目安になります。
参考:リニューアルQ&A|一般社団法人日本照明工業会
実施時期を決める材料は、器具の製造年
実施時期を判断する起点になるのは、照明器具の製造年です。
前述のとおり、日本照明工業会は照明器具の適正交換時期を8〜10年、耐用の限度を15年としています。器具の内部にある安定器についても、同じ年数が示されています。
参考:リニューアルQ&A|一般社団法人日本照明工業会
器具の製造年は、器具本体の銘板(品番・定格・消費電力などが記載された表示)で確認できます。製造年と使用開始の年は同じとは限りませんが、使用年数を推定する目安になります。使用開始から8〜10年が経過している器具は、適正交換時期に達している状態です。
内部の安定器も同じ年数を使い続けているため、早めにLED化を検討すべき段階だといえます。
実際の事故も、使用年数の長い器具に集中しています。NITEの発表資料によると、2016年から2025年までの10年間に発生した蛍光灯器具の事故は205件でした。このうち使用年数が推定できた133件では、約9割(120件)が使用年数10年超の製品によるものです。
参考:見た目はピカピカ、中身は劣化~10年超え「古い蛍光灯器具」の事故に注意~(発表資料)|製品評価技術基盤機構(NITE)
ただし、使用年数だけで方式は決まりません。バイパス工事と器具ごと交換のどちらが適しているかは、器具本体・ソケット・配線の状態を確認して判断します。
なお、使用年数が10年以内であっても、LED化すれば、前述の試算のとおり電気代を削減できます。
ここで示した金額は、年間3,000時間点灯・25円/kWhという前提での目安です。実際の金額は器具の種類や点灯時間、契約している電力量料金単価によって変わります。電気料金の請求書に記載された単価で、ぜひ計算し直してみてください。
自社だけで判断が難しい場合は、現場調査で器具や安定器の状態を確認するという選択肢もあります。
株式会社MASSでは、現地調査のうえでお客様の器具・点灯時間・契約単価に合わせた削減シミュレーションとお見積りを無料でお出ししています。「いつ手を打つべきか」の判断材料としてご利用ください。
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事業所で慎重な判断が求められる3つの理由

「工事不要」をうたう製品は、通販サイトなどで手軽に購入できます。しかし事業所で使う場合は、設備管理の観点から慎重な判断が必要です。ここでは、その理由を3つ見ていきましょう。
火災が発生した場合、事業者の設備管理が問われる可能性がある
事業所の照明は設備管理の対象であり、選定や維持管理の判断は管理者・事業者が担います。万が一火災が発生した場合、その選定・管理のあり方について、事業者の責任が問われる可能性がある点に注意が必要です。
責任の範囲や保険の扱いは、個別の契約・状況によって変わります。詳細は、所轄の消防署や保険会社にご確認ください。蛍光ランプの交換方法については、消防庁も各消防本部に向けて情報提供を行い、火災予防の観点からの周知を促しています。
参考:蛍光ランプ交換に関する情報提供について(令和6年7月12日 事務連絡)|消防庁
灯数が多いほど交換作業と高所作業の負担が重くなる
照明の灯数が多いほど、交換にかかる作業の負担は重くなります。
工場・倉庫のような高天井の現場では、1灯の交換にも高所作業が伴います。数十〜数百灯を抱える事業所では、安全管理や人件費の負担も無視できません。
ランプ切れのたびの交換対応、営業時間外や設備停止のタイミングに合わせた作業調整といった運用負荷も、灯数に比例して増えていきます。
「工事不要」をうたう製品でランプだけを交換した場合も、ランプや安定器の寿命が来れば、高所での交換作業が繰り返し発生する点に注意が必要です。
バイパス工事で安定器を回路から切り離すか、器具ごと交換で安定器を撤去すれば、安定器の寿命による交換作業は発生しなくなります。
2027年の蛍光灯製造終了で選択肢が狭まっていく
水銀に関する水俣条約にもとづき、一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入は段階的に禁止されます。
直管形・環形は2028年1月1日から製造・輸出入が禁止となり、2027年末で製造が終了します。コンパクト形は2027年1月1日から製造・輸出入が禁止で、2026年末で製造を終了します。また、直管形・環形のうちハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を用いたものは、ほかの直管形・環形より1年早い2027年1月1日から製造・輸出入が禁止されます。
ここで誤解しやすいのが、規制の対象です。禁止されるのは製造と輸出入のみで、蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されません。現在使用中の蛍光ランプをすぐに取り外す必要はなく、禁止日までに製造された在庫品の売買・使用も可能です。
参考:一般照明用の蛍光ランプの規制について|環境省
ただし、製造が終了すれば市場の在庫は徐々に減っていきます。LED化の実施が遅くなるほど、交換用ランプは入手しにくくなる点に注意が必要です。駆け込み需要で工事業者の手配が難しくなる可能性もあります。
蛍光灯の製造終了の全体像は、次の記事で詳しく解説しています。
▼あわせて読みたい
蛍光灯2027年問題とは?製造終了の影響・対策や事業者向け補助金について
事業所のLED化はバイパス工事と器具ごと交換のどちらを選ぶ?判断基準と費用の抑え方

ここまで3つの方式を紹介してきました。バイパス工事と器具ごと交換のどちらが適しているかは、既存器具の状態によって変わります。
電源別置型も既存の器具本体を使う方式のため、考え方はバイパス工事と同じです。ここでは、2つの方式の判断基準を整理し、導入時の課題になりやすい初期費用への対処も解説します。
既存器具の状態で方式を選ぶ
バイパス工事と器具ごと交換の違いは、次のとおりです。
| 観点 | バイパス工事 | 器具ごと交換 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 器具本体を買い替えないため、抑えやすい | 器具本体も新しくするため、高くなりやすい |
| 安定器 | 回路から切り離す | 器具とともに撤去する |
| 器具本体・ソケット・器具内の配線 | 器具本体と配線は既存のものを使う(ソケットは同時交換が推奨される) | すべて新しくなる |
| 適している器具の状態 | 点検で器具本体・配線に劣化が見られない | 点検で器具本体・配線に劣化が見られる |
どちらの方式でも、安定器は回路から外れ、安定器による電力の損失もなくなります。消防庁も、バイパス工事を適切に実施した器具でLEDランプを使う場合は、安定器に起因する火災のおそれはないとしています。
参考:蛍光ランプ交換に関する情報提供について(令和6年7月12日 事務連絡)|消防庁
2つの方式の違いは、器具本体や器具内の配線を使い続けるかどうかです。既存器具を安全に活用できる場合は、バイパス工事を選ぶと初期費用を抑えやすくなります。
一方、器具本体や配線に劣化が見られる場合は、器具ごと交換が適しています。
劣化の兆候には、器具本体の錆や変色、ソケットの変色やひび割れ、器具内の電線被覆の亀裂などがあります。ただし、日本照明工業会は、外観だけでは判断できない器具の劣化が進んでいると指摘しています。
器具を開けて行う専門的な点検は有資格者が担うため、方式は施工業者の点検結果をもとに判断すると安心です。
参考:古い照明器具をご使用の方へ、その照明器具、本当に大丈夫ですか?|LED照明ナビ|一般社団法人日本照明工業会
なお、器具ごと交換は、業界団体や公的機関が推奨する方式です。日本照明工業会は、既設の蛍光灯器具の大半がすでに10年以上使用されていると指摘しています。内部配線やソケット、絶縁物などの劣化が進んでいるため、安全を考慮したLED器具への交換を推奨しています。
NITEも、使用年数が10年を超えた器具については、器具ごとLED照明への交換の検討を促しました。また、消防庁も蛍光ランプ交換に関する安全啓発リーフレットを送付し、注意を呼びかけています。
既存器具を活かしてバイパス工事を行う場合は、内部配線やソケットなどの劣化を事前に確認します。日本照明工業会は、器具を改造して直管型LEDランプを使う場合も、ソケットなど器具内の電気部品を同時に交換することを推奨しています。
そのうえで、有資格者が適切に施工することが前提です。
参考:蛍光ランプ交換に関する安全啓発リーフレットの送付について(令和6年6月10日 事務連絡)|消防庁
参考:見た目はピカピカ、中身は劣化~10年超え「古い蛍光灯器具」の事故に注意~(発表資料)|製品評価技術基盤機構(NITE)
参考:蛍光灯器具に取り付けできる直管LEDランプの使用・照明器具改造に関する注意点(JLA2008)|一般社団法人日本照明工業会
初期費用が課題になる場合の選択肢
LED化の主な課題のひとつは、初期費用です。灯数が多い事業所ほど削減効果は大きくなる一方で、一度に必要な投資額も大きくなります。前項で解説したバイパス工事も、既存器具を安全に活かせる場合に初期費用を抑える方法のひとつです。
支払い方法を工夫する手段としては、分割払いやリースがあるほか、ESCOという選択肢もあります。ESCOとは、省エネ改修の費用を、削減できた光熱費の中から支払う契約形態を指します。
LED導入を検討している場合は、ESCOの仕組みを活用した株式会社MASSの「LEDソリューション」も選択肢のひとつです。初期費用0円でLED交換が可能で、削減できた電気代の範囲から費用をお支払いいただく仕組みのため、導入時のご負担を抑えられます。
設備投資の予算化や減価償却の手続きが不要なため、稟議を通しやすい点も特長です。
さらに、契約期間(通常5年)の終了後は設備の所有権がお客様に移り、以降のお支払いなく削減効果が続くため、長期的なコストメリットも期待できます。
費用面に不安がある場合でも導入しやすい仕組みとなっているため、照明の見直しを検討している方はお問い合わせください。
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蛍光灯のLED化と工事不要に関するよくある質問

最後に、蛍光灯のLED化と「工事不要」に関してよくある質問をまとめました。
Q. 工事不要の直管型LEDランプは自分で取り付けてもよいですか?
事業所では、自己判断で取り付ける前に、専門業者へ相談することをおすすめします。
「工事不要」をうたう製品は、ランプの差し替えだけで点灯するように作られています。ただし、器具の点灯方式との適合確認が前提で、適合しない組み合わせは発煙・発火の原因になる点に注意が必要です。
本記事で解説した4つのリスクを踏まえると、事業所では慎重に判断すべきです。
なお、安定器を切り離すバイパス工事は電気工事にあたります。電気工事士法(第3条)にもとづき、電気工事士の資格を持つ者による施工が必要です。
参考:電気工事士法|e-Gov法令検索
参考:照明器具のランプ交換による事故(製品安全情報マガジン Vol.475)|製品評価技術基盤機構(NITE)
Q. 「工事不要」と書かれた製品ならどの器具でも使えますか?
どの器具でも使えるわけではありません。既存の安定器を通して点灯する方式は、器具側の点灯方式との適合が前提です。点灯方式には、グロースタータ式・ラピッドスタート式・インバータ式があります。
適合しない組み合わせは発煙・発火や故障の原因になるため、検討する場合は事前にメーカーの適合表で確認してください。
Q. 器具の製造年はどこを見れば分かりますか?
器具本体に表示されている銘板(品番・定格・消費電力などが記載された表示)で確認可能です。
銘板には製造年または製造年月日が記載されています。NITEも、銘板の製造年などから使用年数を推定し、10年を超えている場合は器具ごとLED照明への交換を検討するよう促しています。
ただし、バイパス工事と器具ごと交換のどちらを選ぶかは、使用年数だけでなく、器具本体・ソケット・配線の状態も確認して判断します。
参考:見た目はピカピカ、中身は劣化~10年超え「古い蛍光灯器具」の事故に注意~(発表資料)|製品評価技術基盤機構(NITE)
Q. 蛍光灯は2027年以降使えなくなりますか?
2027年以降、すべての蛍光灯が一斉に使用できなくなるわけではありません。製造・輸出入が禁止される時期は種類によって異なり、コンパクト形は2027年1月1日から、直管形・環形は2028年1月1日から(ハロりん酸塩を用いたものは2027年1月1日から)です。
禁止されるのは製造と輸出入のみで、蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されません。現在使用中の蛍光灯はそのまま使い続けられ、禁止日までに製造された在庫品の購入も可能です。
ただし、製造終了後は交換用ランプの入手が徐々に難しくなっていくため、LED化の計画は早めに立てておくことをおすすめします。
参考:一般照明用の蛍光ランプの規制について|環境省
Q. テナント入居の事業所でもLED化の工事はできますか?
建物や設備の所有区分や賃貸借契約の内容によって異なります。照明器具が貸主の所有物である場合、借主の判断だけで工事することはできず、貸主の承諾が必要です。まずは賃貸借契約の内容を確認し、貸主・管理会社に相談しましょう。
まとめ|蛍光灯のLED化は、原則として工事が必要

最後に、本記事の要点を整理します。
- 蛍光灯とLEDは点灯の仕組みが異なるため、蛍光灯のLED化は工事を伴う方法が基本
- 「工事不要」をうたう製品は既存の安定器を利用して点灯する方式で、発煙・発火などの事故例が報告されており、日本照明工業会は器具ごとの交換を推奨している
- 事業所が検討すべきは「どの方式で・いつ実施するか」
- 蛍光灯のまま使い続ける間は、LEDとの消費電力差の分だけ電気代が多くかかる
- 方式は、既存器具の状態に応じて、バイパス工事などで既存器具を活かすか、器具ごと交換するかを選ぶ
蛍光灯の製造終了に向けて、照明の見直しは避けては通れません。実施が遅くなるほど、工事業者の手配や製品の選択肢が限られていく可能性があります。
株式会社MASSは、これまで12,000施設以上のLED導入に携わってきました。「自社の器具はバイパス工事で活かせるのか」「器具ごと交換した場合いくらかかるのか」といったご相談の段階から承っています。
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