蛍光灯の2027年問題について徹底解説。生産終了するとどうなる?
2024.12.17
「蛍光灯の2027年問題」は、2024年現在では十分に世間に認知されていませんが、企業や家庭に与える影響は非常に大きい問題です。
この記事では、「蛍光灯の2027年問題」の概要を解説し、蛍光灯の生産終了後にどのような影響が出るか、また、補助金を活用した対応方法についても紹介します。
蛍光灯からLED照明への切り替えを先送りしている方々に向けて、今が照明見直しの絶好の機会であることをお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
「蛍光灯の2027年問題」の概要
「蛍光灯の2027年問題」とは、2027年末をもって蛍光灯の製造および輸出入が全面的に禁止されることに伴うさまざまな問題を指します。
蛍光灯の製造禁止は、環境保護や省エネルギーの観点から行われる規制強化の一環です。
現在、あらゆる場面でLED照明への移行が進んでいますが、蛍光灯は依然として製造・供給されており、多くの家庭や施設で使われ続けています。そのため、この規制が利用者に与える影響は小さくありません。
ここからは、蛍光灯を使用している方々にどのような影響が及ぶのか、詳しく解説します。
蛍光灯が製造禁止・輸出入廃止になる
2027年末までに、すべての一般照明用蛍光灯の製造および輸出入が禁止されることが決定しています。
この背景には、2023年11月に開催された「水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議」の議論が大きく影響しています。
本会議では、水俣病の原因とされる水銀を含む製品に関する規制が見直され、環境保護の観点から、蛍光灯も規制対象となりました。蛍光灯には微量ながら水銀が含まれており、その使用は地球環境や人間の健康に影響を及ぼす可能性があるためです。
この禁止措置は、水銀を削減する国際条約に対応するために必要な規制として導入されます。
出典:
「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議」の結果について|経済産業省
一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入は2027年までに廃止されます|環境省
これまで使用していた蛍光灯は継続して使える
2027年末までに蛍光灯の製造および輸出入が禁止されますが、これまで使用していた蛍光灯の利用が即座に禁止されるわけではありません。現在使用中の蛍光灯は、継続して使用できます。
また、2027年末までに製造された蛍光灯であれば、そのあとも販売や購入が認められています。
ただし、蛍光灯の交換部品や修理用の製品は製造されなくなるため、交換や修理が必要な場合は2027年末までに対応しなければなりません。
出典:一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入は2027年までに廃止されます|環境省
蛍光ランプの種類によって廃止時期が異なる
2027年問題とはいえ、蛍光ランプの種類によって廃止される時期には違いがあります。
例えば、直管蛍光ランプと環形蛍光ランプの「三波長系」タイプは2027年12月31日ですが、コンパクト形蛍光ランプや「ハロリン酸塩系」タイプは2026年12月31日で廃止となります。
出典:一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入は2027年までに廃止されます|環境省
なぜ蛍光灯は生産終了になる?
蛍光灯の生産終了の背景には、蛍光灯に使用される水銀に関する国際的な規制強化があります。
蛍光灯に含まれている水銀は、無機水銀の一種であり、水俣病の原因物質である有機水銀とは異なります。
ですが、だからといって無機水銀が安全なわけではありません。環境中に放出されると無機水銀は、微生物によって有機水銀に変化する可能性があります。無機水銀自体も、人体に有害な影響を与えるかもしれません。
また、使用済み蛍光灯は、廃棄物となります。破損した場合、水銀が漏洩し、土壌や水質汚染を引き起こす危険性があるため、このリスクも水俣条約が規制強化の対象としている点です。
「水銀に関する水俣条約」は、水銀を含む製品全体を規制する包括的な取り組みです。この条約のもと、蛍光灯も規制対象となり、環境保護や健康被害防止の観点から生産終了が決定されている状況です。
参考:魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A|日本生活協同組合連合会
蛍光灯の生産が終了するとどうなる?
2024年12月現在、蛍光灯は順次生産が終了しています。
では、この生産終了によって具体的にどのような影響があるのか、詳しく解説します。
蛍光灯の生産終了に伴う具体的な対応について不安がある場合は、専門家や電気工事店に相談するのも効果的です。
専門的なアドバイスを得ることで、最適な移行計画を立てられるでしょう。
LED化が進む
政府は2030年までにLED照明の普及率を100%にすることを目指しているため、今後、LED照明への移行が加速すると考えられます。
また、蛍光灯と比較してLED照明には、以下のような利点があります。
- 省エネ効果が高い:蛍光灯に比べて直管形蛍光灯タイプのLEDは消費電力が約2分の1のため、電気代を削減できる
- 寿命が長い:点灯可能時間が蛍光灯の約4倍のため、交換頻度が少なく経済的である
- 発熱が少ない:熱をもちにくいため、空調効率が上がる
- 虫が寄り付きにくい:LEDの光には紫外線がほとんどないため、虫が集まりにくい
一方で、LED照明への移行には初期投資が必要です。
場合によってはランプだけでなく、照明器具ごとの交換が必要になることがあり、工事費がかさむおそれがあります。
さらに、近年では樹脂や鋼材などの材料価格の高騰により、メーカーによるLED照明の値上げが行われています。
そのため、導入を「先送り」にすると、将来的に高額な費用がかかるリスクがあります。
出典:LED照明の導入について|地球温暖化対策推進本部
蛍光灯の価格が上昇する
蛍光灯の生産終了後、新しい蛍光灯の製造が行われなくなるため、市場での在庫が限られていきます。
この供給不足により、蛍光灯の価格が上昇する可能性が高くなります。
時間が経つにつれて在庫がさらに減少すれば、必要な製品が手に入りにくくなり、蛍光灯の交換や修理もできなくなることが予想されます。
廃棄やリサイクルの問題が増加する
蛍光灯には水銀が含まれているため、廃棄時に適切な処理を行わないと人体や環境に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
このため、事業所から排出される蛍光灯は「水銀使用製品産業廃棄物」として扱われ、特別な処理が義務付けられています。
さらに、リサイクルの観点からも、蛍光灯の処理は複雑です。
使用済み蛍光灯の回収やリサイクルの需要が増えることで、処理施設や回収システムへの負担が大きくなることが懸念されます。
生産終了後は、廃棄やリサイクルの問題が一層深刻化する可能性があるため、適切な処理方法やシステムの整備が求められます。
参考:事業者向け水銀使用ランプの適正と排出について|JLMA 一般社団法人日本照明工業会
「蛍光灯の2027年問題」に対する世間の認知について
パナソニック株式会社が2024年に実施した調査によると、「蛍光灯の2027年問題」を認識している方は、全国の20代〜60代の男女800人のうち約2割にとどまりました。この結果からも、多くの方が蛍光灯の生産終了やその影響について十分に把握していない現状が明らかです。
また、蛍光灯とLED照明の違いについて「とても理解している」と答えた方は30.9%でした。
一方で、蛍光灯からLED照明に切り替えていない理由として、「替えるのが面倒だから」や「特に理由はない」と回答した方が半数以上を占めています。
しかし、蛍光灯からLED照明に切り替えることで、消費電力を大幅に削減することが可能です。そのため、蛍光灯とLED照明の違いやメリットを正しく理解し、計画的にLED照明を導入していくことが求められます。
消費者の意識を高めるための情報提供や啓発活動が、今後ますます重要になるでしょう。
出典:「蛍光灯の製造・輸出入が終了」することを知らない人が約8割。LED照明に変えない理由は「取り替えが面倒」や「特に理由はない」が約半数。|PR TIMES
特定のメーカーによる生産終了の発表まとめ
各メーカーの生産終了時期や発表内容について、以下の表にまとめました。
会社名 | 品種 | 生産終了時期 | 発表概要 | リリース記事のURL |
---|---|---|---|---|
パナソニック株式会社エレクトリックワークス社 | 直管蛍光ランプ(三波長形) | 2027年9月末 | 直管蛍光ランプとツイン蛍光ランプ(コンパクト形蛍光ランプ)はLED化する場合は電気工事の有資格者による工事が必要。 一体型LEDベースライト「iDシリーズ」を2025年1月にモデルチェンジ |
https://news.panasonic.com/jp/press/jn241001-2 |
丸形蛍光ランプ | ||||
点灯管 | ||||
ツイン蛍光ランプ(コンパクト形蛍光ランプ) | 2026年9月末 | |||
株式会社ホタルクス | ・残光・高周波点灯専用蛍光ランプ ・高周波点灯専用蛍光ランプ ・残光・三波長形蛍光ランプ ・三波長形蛍光ランプ ・昼白色蛍光ランプ ・高演色形蛍光ランプ ・看板用蛍光ランプ ・ブラックライトブルー蛍光ランプ ・殺菌ランプ |
2024年3月31日 | 在庫限りで販売終了 | https://www.hotalux.com/corporate/press/2023-11-15.html |
東芝ライテック株式会社 | メロウホワイト蛍光ランプ(直管形) | 2024年12月在庫限り | 状況によって販売終了時期が早まる場合がある | https://www.tlt.co.jp/tlt/information/seihin/finished/20240201/20240201.htm |
一般形蛍光ランプ(直管形) | 2024年12月在庫限り | |||
三波長形蛍光ランプ(直管形 FLR40多本パック) | 2024年3月在庫限り | |||
三波長形蛍光ランプ(直管形 HF32多本パック) | 2025年3月在庫限り | |||
三菱電機株式会社 | 電球形蛍光ランプ(30W以下・水銀含有5㎎以下) | 2025年末 | LEDライトのMyシリーズやGTシリーズへ移行 | https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/ldg/wink/ssl/wink_doc/m_contents/doc/FREE_PARTS/2312mlf.pdf |
電球形蛍光ランプ(30W超・水銀含有すべて) | 2026年末 | |||
コンパクト形蛍光ランプ | 2026年末 | |||
直管・非直管蛍光ランプ(三波長形蛍光体) | 2027年末 | |||
直管・非直管蛍光ランプ(ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体) | 2026年末 | |||
日立グローバルライフソリューションズ株式会社 | 電球形蛍光ランプ | 2026年12月末 | 交換形LEDベース器具・一体形LEDベース器具・LEDダウンライト・高天井LEDへ切り替え | https://www.hitachi-gls.co.jp/lighting/in_detail/index.html |
コンパクト形蛍光ランプ | 2026年12月末 | |||
直管形蛍光ランプ・環形蛍光ランプ(ハロ蛍光体を使用したランプ) | 2026年12月末 | |||
直管形蛍光ランプ・環形蛍光ランプ(すべてのランプ) | 2027年12月末 | |||
水銀ランプ | 2020年12月末 |
蛍光灯の生産終了がLED化の補助金活用に与える影響
LED照明への切り替えには初期投資が必要ですが、政府や地方自治体が提供する補助金制度を活用することで、費用負担を軽減できます。
例えば、以下の地域で具体的な補助金制度が設けられています。
自治体 | 補助金制度の概要 |
---|---|
京都府 | 既存の工場や店舗などを所有する中小企業を対象に、50万円~800万円を補助 |
札幌市 | 延べ面積300平米以上の建築物を所有する事業者に対し、建物の延べ面積に応じて60万円~300万円を補助 |
横浜市 | 市内に1年以上事業所をもつ中小製造業者が3者以上で連携して事業を行う場合、助成対象経費の1/2を補助(上限20万円) |
これらの制度は、企業や施設が蛍光灯からLED照明へ移行する際の経済的なハードルを下げてくれるでしょう。
ただし、補助金には申請から承認まで時間がかかるという側面もあるため、実際にどういう方法が最もメリットがあるか、計画的にLED化を進めることが重要です。
出典:
令和6年度 京都府サプライチェーン省エネ推進事業補助金【第2回公募】|一般社団法人京都府産業廃棄物3R支援センター
ゼロエネルギー・ビル(ZEB)・ゼロエネルギー・マンション(ZEH-M)設計支援補助金|札幌市
ものづくり魅力向上助成金|横浜市
【FAQ】蛍光灯の2027年問題に関するよくある質問
ここでは、蛍光灯の2027年問題に関するよくある質問をまとめました。
LED照明義務化への懸念や賃貸住宅の照明、蛍光灯の代替品について、多くの方が疑問を抱えています。
それぞれの疑問にお答えし、安心して対応できるよう具体的な対策も併せて解説します。
2030年にはLED化が義務化される?
先述のとおり、政府は2030年までにすべての照明をLEDに切り替えることを目標にしています。この取り組みは、家庭だけでなく、オフィスや工場など、あらゆる場所の照明が対象です。
2030年にはLED照明の使用が義務化される可能性が高いため、特に企業や施設では計画的にLED照明への切り替えを進める必要があります。
今後の義務化を見据え、早急な対応が求められる状況です。
2027年問題で賃貸住宅の照明はどうなる?
賃貸住宅のオーナーや管理会社は、蛍光灯からLED照明への切り替えを急ぐ必要があります。
特に古い賃貸物件では、蛍光灯が多く使用されているケースが多いため、対応が遅れるとトラブルにつながるかもしれません。2027年以降は新たな蛍光灯を購入できなくなるため、既存の照明器具をLED照明に交換することが求められます。
また、交換のタイミングが遅れると工事業者の予約が取りにくくなるだけでなく、工事費や照明器具の価格が高騰する懸念もあるため、早めの計画と対応が推奨されます。
蛍光灯の代替品は何を選べばよい?
蛍光灯の主な代替品として推奨されるのがLEDランプです。
LEDランプは、蛍光灯と同じ形をしたもので蛍光灯よりも消費電力が少なく、寿命が長いため、経済的でありながら環境にも優しい選択肢となっています。
ただし、LEDランプに切り替える際には注意が必要です。消費電力や接続コネクタなどの規格があり、既存の照明器具とLEDランプの組み合わせが適切でない場合、火災や感電などの事故が発生する可能性があります。
そのため、現在使用している照明器具にLEDランプを接続できるかを確認し、必要に応じて専門家によるチェックや電気工事店に工事を依頼することが大切です。
蛍光灯の生産終了に伴う照明設計の見直しならMASSにご相談ください
蛍光灯の生産終了に伴ってLED照明への切り替えが加速し、蛍光灯価格の上昇、廃棄やリサイクルの問題も増加するでしょう。
また、2030年以降にはLED照明の義務化が予想されており、企業や家庭では早急に対応が必要です。
しかし、LEDへの切り替えは単に蛍光管を交換するだけでは済まず、照明器具ごと交換が必要になるなど、工事が大規模になる可能性もあります。
また、不適切な照明設計や機器との不整合が原因で、火災や感電などの事故を引き起こす可能性もあります。
そのため、LED照明への切り替えや設計の見直しを行う際には、専門家と電気工事店に相談することが重要です。
安全かつ効率的にLED照明へ切り替えたい場合には、ぜひ全国12,200施設への導入実績をもつMASSへお任せください。